仮想通貨は日本のみならず世界で盛り上がりを見せています。今回は仮想通貨に積極的な取り組みをしているUAEについてご紹介します。
仮想通貨と暗号資産
現在、仮想通貨と暗号資産の2つの呼び方があります。日本では最初に仮想通貨という言葉が広まりました。その後、仮想通貨は瞬く間に世界で広まり、国際会議などのオフィシャルな場ではCrypto asset(暗号資産)と呼ばれるようになりました。国際基準に合わせるため日本においても暗号資産と呼ぶようになりましたが、先に広まった仮想通貨という呼び方は馴染みがあり現在も使用されています。本記事では仮想通貨に統一しております。
UAEとドバイ
UAEと聞くとあまり仮想通貨との結びつきがイメージ出来ない方もいるかもしれません。UAE(アラブ首長国連邦)は7つの首長国からなる連邦制国家で、その首長国の内の一つがドバイです。ドバイは所得税や固定資産税が無く、税金が優遇されています。富裕層の獲得に積極的なドバイを有するUAEの仮想通貨へ有利な取り組みとなれば少しイメージし易いのではないでしょうか。
仮想通貨規制の整備
VARA(バーチャル資産規制局)の設立
仮想通貨は、ブロックチェーン技術に基づく分散型のデジタル通貨で、通貨を管理する当局が無いことが特徴です。2022年5月、ドバイ政府は世界で初めてVARA(Virtual Assets Regulatory Authority=バーチャル資産規制局)を設立しました。VARAはドバイでの仮想通貨に関する規制、監督を役目とする規制機関で、ガイドラインとして市場の健全性と安定性や消費者保護などを掲げています。ドバイへの誘致に積極的な取り組みに呼応する形で、バイナンスやBybit、Crypto.comもすでにドバイでビジネスライセンスを取得しています。
DMCC Crypto Centerの設立
DMCC(ドバイ・マルチ・コモディティーズ・センター)とは
DMCC(Dubai Multi Commodities Centre)はドバイ政府によって2002年に設立されたフリーゾーンです。DMCCでは100%外国資本での法人設立が可能であったり、所得税がなかったり、輸出入に関する規制が簡素化されていたりとメリットが多く、多くの外国籍企業がDMCC内に会社を設立しています。
DMCC Crypto Centerの設立
DMCCは、仮想通貨やブロックチェーンで事業を行う企業に特化したエコシステムを目指す「DMCC Crypto Centre(DMCCクリプトセンター)」を設立しました。DMCCクリプトセンターは、スイスのクリプト・バレーの立役者であるCV Labsと協力して立ち上げられました。実はスイスもブロックチェーンに力を入れており、チューリッヒやその近郊にあるツークには、ブロックチェーン技術関連企業が800社以上集まっています。そのため、この地域はクリプト・バレーとしても知られています。
Dubai World Trade Centre(ドバイ世界貿易センター)の関与
ドバイ政府傘下のドバイ世界貿易センター(DWTC)は、仮想通貨やNFTなどデジタル資産市場の発展を目的として、規制機関としてサポートすることを発表しました。DWTCは、暗号資産を取り扱うための規制の整備や、新興企業・中小企業が、事業を立ち上げた後に、海外市場へ進出する際の支援も行うとのことです。
ブロックチェーン戦略2021
UAEでは、仮想通貨ビジネスの追求を支援することを目的とした「ブロックチェーン戦略2021」を公表しました。この戦略では、ビザの申請や請求書の支払いといった国内での全取引の最大50%をブロックチェーンで処理することを目標としています。この分野において、UAEの地位を確立するという強い意志が感じられます。
仮想通貨に対する規制
VARA(バーチャル資産規制局)は、仮想通貨関連の規制ガイドラインを発表し、匿名性の高い通貨を禁止することを盛り込んでいます。規制の対象となる代表的な匿名通貨は、モネロ(XMR)、ジーキャッシュ(ZEC)が挙げられます。これらの通貨は匿名性が高く、悪用される懸念があることから、問題視されていました。
仮想通貨へのUAEの取り組みに注目
如何でしたでしょうか。フリーゾーンで税金など優遇し、積極的な取り組みを見せていたUAEですが、昨今の仮想通貨のトレンドも捉えて推進しています。管理する当局が無い未知の通貨に規制や法整備といったガバナンスを効かせることで、外国企業を誘致しています。変化の大きい仮想通貨ビジネスですので、今後の取り組みにも注目です。